パラスポーツスタートガイド

亀山 海 選手(パラ陸上/ジャベリックスロー/やり投げ600g)亀山 海 選手(パラ陸上/ジャベリックスロー/やり投げ600g)

始めるのに、遅すぎることはない
仲間と楽しみながら、世界記録へ

パラ陸上競技のやり投(600g)、Virtus(国際知的障害者スポーツ連盟)のII-2(ダウン症クラス)で次々と世界記録を更新し続けている亀山 海(かめやま かい)選手。やり投げを本格的に始めてから3年。幼いころからさまざまなスポーツで鍛えられた体力に加え、コーチの意見を素直に吸収する姿勢を力に変え、遠くに飛ばすためのさまざまな技術を次々と習得。さらなる記録更新が期待されます。お母さまと金 尚龍(きん しょうりゅう)コーチにも同席いただき、これまでの歩みや今後の目標などを伺いました。

2026年●●月●●日公開

25-01

「楽しい」から始まった、さまざまなスポーツへの挑戦

「小さいころから体を動かすことが大好きでした。中学生のころ、ボクシングにも憧れ、家の近くにジムがあったので入門。それからずっとボクシングも続けています」(亀山選手)

当時通っていた中学校では、毎朝マラソンをしていました。陸上・バスケットボール・キックベース・ソフトボール投げなど、いろいろな部活にも所属し大会にも参加。体力がついたことはもちろん、仲間と一緒に楽しく練習や競技に挑戦できたことが、今日まで続くスポーツ好きの海を育んでくれたのだと思っています(母)

得意との出会い――走る(こと)より、投げることが好き

「お母さんが陸上チームのコーチをしていたので、高校生になるとそのチームにも参加。ここで、ダンスも教わります。陸上は走るよりも投げる方が好きだったので、このころからジャベリックスローを本格的に取り組むようになりました。妹も陸上をしていて、うちは陸上一家なんです」(亀山選手)

チームでは学生さんがダンスを教えてくれるのですが、ここでも新たな仲間と一緒に楽しく踊ることが海には魅力的だったようです。ダンスは今でも踊り続けていて、区民まつりや地域のイベントなどでステージに立っています。ジャベリックスローでは毎年、東京都障害者スポーツ大会に出場していました。ただ、海のようなダウン症の選手は活躍が難しく、「お母さんを全国大会につれていく」と海は宣言していましたが、親としては体力低下防止のために競技を継続していたのが正直なところです(母)

25-02

VirtusにII-2(ダウン症クラス)があることを知り、やり投げを始める

「やり投げを始めたのは数年前からです。最初は難しかったですが、段々と慣れてきて、今ではうまく飛ぶようになりました」(亀山選手)

ところが、2023年の全国障害者スポーツ大会では東京都代表に選ばれ、全国大会に出場することができました。約束を守ってくれたのはもちろんですが、東京都代表となったことで、ここでも新たなコーチや仲間と出会え、VirtusにII-2クラスがあることを教えていただき、やり投げを始めるにようにもなりました。そしてここでも、新たに出会った方々と共に練習することで、さらに記録が伸びていったことが、海にとっては嬉しかったようです(母)

※II-2(ダウン症クラス)
Virtusが2019年の世界大会から新設したダウン症の選手を対象としたクラス。その後、2021年ごろからパラ陸上の国内大会でもダウン症のクラスが採用されており、2027年度からは全国障害者スポーツ大会でもダウン症の区分が新設される予定。

トレーニングに行き詰まるも、プロのコーチとの出会いでさらに飛躍を

「金さんはやりの角度など、専門的、技術的な細かいことを教えてくれるので嬉しいです。最初は少し緊張しましたが、今では信頼しきっています」(亀山選手)

当初はやりも持っていませんし、練習場所も分からなかったので、近くの河川敷で木の棒などを投げて練習していました。また、どのような指導をすればよいのかも分からないなど、苦労も多かったです。そこで、日本パラ陸上競技連盟の方に動画を観てもらい、アドバイスをもらうようにしたんです。ただ私は、海が思い通りにやらないと言葉が強くなってしまう性分で(苦笑)。今思えば、連盟の方からの内容を、正確に伝えられていなかったように思います。そんなとき、知人から金コーチを紹介していただきました。金コーチは私とは違い、海が理解していないと思ったら、言葉を変えて理解するまで丁寧に話しかけ続けてくれるので、海はもちろんダウン症の選手との相性がよいと思います(母)

「うまい」。海がやりを投げている様子を見た、私の最初の印象です。ただ、やりの角度や助走などを改善すれば、さらに記録は伸びるだろう、とも感じました。実際にコーチを始めてからは、何を指導しても素直に聞いてくれる。それを100%実直に、コツコツと頑張る性格なので、これは間違いなく記録が伸び続けるだろうと思いましたね(金コーチ)

平日の昼間は仕事をしていることも多いのですが、帰宅後に自宅で筋トレや体幹トレーニングなどを欠かしません。加えて、設備の整った高校や陸上競技場などでの金コーチによる本格的なやり投げの練習。さらには、東京都知的障がい者陸上競技連盟の練習会への参加。河川敷での練習やボクシング、ダンスも今でも続けていて、特にボクシングは体幹や重心移動・瞬発力に効果があると感じています。ただ、ダウン症であることや年齢を考慮し、オーバーワークにはならないよう、適宜休みを入れるなど配慮しています(母)

25-03

世界記録を更新し続けるのが楽しい。プレッシャーはありません

「練習でも大会でも、自己ベストを出す。記録を更新し続けることが楽しいですし、やり投げを続けている理由でもあります。プレッシャーはありません」(亀山選手)

やりを遠くに飛ばすためには、きれいなフォーム、速い助走、筋力などが必要で、それぞれの選手が自分の強みを活かしながら、やりに力を伝えています。初めて観る方はそのあたりに注目してもらえると面白いかと。ちなみに海はフォームがきれいだと思っています(母)

海は現在30歳です。競技を始めたのが遅いと思う方もいるかもしれませんが、世界記録を更新し続けています。ダウン症の方に限らず、障害がある方、特に海のような年齢の方の励み、背中を押すきっかけになるように、これからも世界記録の更新はもちろん、表舞台にどんどん出ていってほしいと思っています(金コーチ)

25-04

2027年の世界大会の目標は40m そして、挑戦する楽しさを後輩へ

「新しいトレーニングを取り入れるなどして、いろいろと練習をがんばり、さらにやりを遠くに飛ばしたいと思っています。ジャベリックスローでも再び全国大会に出て、今度は金メダル。40mは飛ばしたいです。後輩を教えるようなこともしてみたいです」(亀山選手)

2027年2月にタイで開催予定のVirtusアジアオセアニア大会で35mを投げ、金メダルを獲得したいと考えています。さらに2027年にエジプトで開催される4年に一度の国際大会であるVirtusグローバルゲームズで、こちらも金メダル。そのときに40mを投げるのが当面の目標です(金コーチ)

現在の世界記録は32.90m(取材時)

24-05
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