パラスポーツスタートガイド

古川 葉月さん(パラスポーツトレーナー)古川 葉月さん(パラスポーツトレーナー)

ボランティアや障害者という意識はありません
陸上に励む仲間といる時間がとにかく楽しい。
今、とても充実しています

平日は病院に勤務し、高齢者やけがをした人のリハビリテーションを行っている古川さん。理学療法士の資格ならびに陸上経験を活かし、週末はパラ陸上選手のガイドランナーや体のケア、トレーニングのサポートなどを行っています。現在の活動をするようになったきっかけや活動を通して得たこと、やりがいなどを伺いました。

2025年11月28日公開

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大学時代にボランティアに参加したことがきっかけ

中高と陸上の短距離をしていましたが、高校卒業を機に選手としてではなくサポートする側にまわろうと、理学療法士を目指す学校に入学しました。1年生のときに東京都障害者スポーツ大会のボランティアに行ってみたら、偶然にも陸上競技の担当でした。そこから現在に至るまで、アルバイトやスタッフなど肩書きは変わっていますが、東京都障害者スポーツセンターでの活動に携わっています。

パラ陸上の選手に誘われ9年ぶりに陸上を再開

社会人となって5年ほど経ったころに知り合った視覚障害の選手から、ガイドランナーに誘われたんです。陸上競技から離れて、9年ほどのブランクはありましたが走ってみると意外と走ることができて、選手としても再び陸上競技に取り組むようになりました。

私やその選手が所属するAC KITAという陸上競技のクラブチームでは、視覚障害や知的障害など40名ほどの障害のある方が所属していたので、他のメンバーのガイドランナーもするようになりました。また、ふだんは理学療法士として病院のリハビリテーション科で働いているので、そこでの知識や経験を活かし、選手のコンディショニングなども行うようになっていきました。

そうこうしていたら、東京都障害者スポーツセンターでの活動でも、ガイドランナーや選手のトレーニング支援を行うようになり、今ではスポーツトレーナーの資格も取得。大会に出る選手に帯同して、トレーナーとして体調を整えるなどの活動まで行うようになりました。人数は少ないですが、義足や脳性麻痺の選手のサポートも行っています。

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自分が走るよりも緊張します

私は学生のころから1人で練習するのが苦手でした。そのためガイドランナーとしてはもちろん、陸上という共通の趣味を通して障害者、健常者関係なく多くの人と関わり合う今の環境がとても心地よいです。

特に、伴走しているときはとても楽しいため、自分では気づかないのですがまわりからは「笑っているよ」と言われますし、実際にそのようです(笑)。ただ、スタートとゴールの瞬間は毎回緊張しています。

走っている最中は選手の腕振りを邪魔しないようにしています。腕振りのタイミングがずれるとガイドロープがたわんだり、つっぱったりしてタイムが落ちますから、それらのことに注意しています。逆にこれらがうまくいったときは走っていて気持ちいいですし、いいタイムが出ることも多いです。

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家にいることがほとんどないほど充実しています

自分の練習や大会も含め、週末はほぼ陸上に充てています。平日も病院で働いていますから、家にいることはほとんどありませんね(笑)。ただ繰り返しになりますが、障害の有無に関係なく、陸上を通して多くの仲間と一緒に練習したり、大会に出ている今の環境がとても充実しています。サポートしている選手が上位に入賞したり、自己ベストを出したときはさらに嬉しいですね。ガイドランナーをすることで、私自身も、自己記録を更新することもできました。

地方の大会に参加することも多く、その際は選手とより長く一緒にいられますし、大会が終わった後は地元の名物を一緒に食べたり観光したり。1人では決して味わうことのなかった陸上を通した新たな楽しみも、今の活動から得ていると思います。

このような感じですから、今の活動や環境は自分になくてはないもので、一種のコミュニティであるとも感じています。また、仕事で培ったスキルを活かすことのできる場でもあるので、仕事との相乗効果も出ていると思います。シンプルに、週末にリフレッシュしていることも大きいですが(笑)。

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ガイドランナーが選手に話しかけている様子に注目してもらいたい

ガイドランナーとして走っている最中には「30m、50m、ラスト10m」や、200mの場合では「ここから直線に入る」など、選手に声がけしていますので、競技を観る際には注目してもらえると、より楽しめるかと思います。

また、選手はそれぞれ障害を受け入れ、その中で何とか「パフォーマンスを最大限に発揮しようと、一人ひとりの選手が挑戦しています。たとえば視覚障害の選手は、特に幅跳びなどは絶対に怖いと思うんです。実際、「こわい」との言葉を発する選手もいますし、私だったら絶対に無理です。でも、練習を繰り返して恐怖を克服していきます。

知的障害の選手は異なる環境に合わせることが難しいのに、さまざまな大会にエントリーし、何とか合わせようとがんばっています。上肢欠損の選手だったら、片手でいかに早くスタートを切れるか、など。リスペクトする点であり、注目してもらいたい点でもあります。

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情報を得て現場に行くことで、道は拓けると思います

パラスポーツを始めてみたいと考えている障害のある方、パラスポーツに関するボランティアに関心がある方どちらも、まずは東京都が運営している「※S&S」などのサイトから情報を得て、そこから自分が参加できそうなイベントに参加することをおすすめします。

実際に行ってみると分かりますが、パラスポーツに関わる人たちは皆温かいので、コミュケーションがそれほど得意でない方でも、すぐに馴染むことができると思います。私がまさに、そうでしたから。

また、ガイドランナーが不足しているので、こちらも私のように学生時代に陸上競技に取り組んでいた方で、パラスポーツやボランティアに興味がある方は、ぜひともガイドランナーをしてほしいと思います。普段の陸上では味わうことのない“伴走”という、陸上の新たな魅力を感じることもできると思います。

▶︎S&S(TOKYO 障スポ&サポート)

撮影日:2025年8月23日(土)
撮影地:長野県茅野市「霞ケ峰陸上競技場」
撮影者:仙波 理

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